0170.【Wimbledon】準決勝の夜。

〈7月11日・深夜・選手専用レジデンス〉

準決勝が終わった夜、
ロンドンはまだ静かだった。

澪は、部屋に荷物を置いてから、
九条のいる階へと向かった。

何かをしに来たわけではない。
ただ、いたかった。

それだけだった。

九条は、ドアを開けたまま澪を迎えた。

言葉は少なかった。
でも、それでよかった。

この二人の間には、
埋めなければならない沈黙などない。

澪は九条の横顔を見ながら、
ずっと思っていたことを、静かに確かめた。

(生きてる。)

(ちゃんと、ここにいる。)

夜が深まるにつれ、
二人の距離は、少しずつ縮まっていった。

互いを守るために。
互いを信じるために。

その夜のことは、
言葉では語らない。

ただ、確かに――
二人の間に、新しい何かが生まれた夜だった。

この夜の続きは、BOOTH短編にて。
▶ urbproject.booth.pm

〈翌朝・7月12日〉

目覚めの気配と、
昨夜の余韻が、まだ身体の奥に残っている。

澪は枕に頬を預けながら、
そっと目を細めた。

胸の奥にある感情は、
熱ではなく、もっと静かな何かだった。

安心。
あるいは、信頼。
それとも、もっと名のない温度。

九条が、そっと毛布を引き寄せて
澪の肩を覆う。

その動作ひとつで、
言葉より多くのことが伝わってくる。

外は、ようやく朝の光が街を包み始めていた。

――この静けさが、いつか消えてしまっても。

今ここにある温度だけは、
きっと、ずっと覚えていると思った。

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URB製作室

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