0167.【Wimbledon】「会いに行っても良いですか?」

〈7月4日・3回戦・センターコート〉

スコアは語る。

7-5。
6-3。
6-4。

1回戦、2回戦とは、わずかに違った。
相手が食らいついた分、試合は長くなった。

それでも、
九条雅臣は崩れなかった。

どんな場面でも、
どんな劣勢でも、
冷静に、正確に、次の一球を打ち続けた。

〈試合後・控え室〉

試合終了後、
九条は控え室に戻った。

氷川がすっと近づいて、iPhoneを手渡す。

「綾瀬さんからのメールです。」

無駄な言葉を省いた、氷川らしい一言だった。

九条はそのままスマホを手に取る。
画面に表示されたのは、澪からのメール。

「お疲れ様です。
お体いかがですか?
休みが取れそうなので、ウィンブルドンの決勝に合わせて四日間、そちらに行きたいと考えています。
準決勝の日に着いて、決勝の翌日に帰国します。
会いに行っても良いですか?
もし、迷惑でしたら無視してください」

その言葉に、
九条は少しだけ表情を変えた。

しかし、すぐに冷静さを取り戻す。

「……迷惑?」

彼は、小さく呟いた。

澪が来てくれる。

その事実が、
九条の心に、
静かに力を与えた。

メールを閉じ、
次の試合のことだけを考える。

それが、
九条のやり方だった。

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URB製作室

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