〈7月4日・3回戦・センターコート〉
スコアは語る。
7-5。
6-3。
6-4。
1回戦、2回戦とは、わずかに違った。
相手が食らいついた分、試合は長くなった。
それでも、
九条雅臣は崩れなかった。
どんな場面でも、
どんな劣勢でも、
冷静に、正確に、次の一球を打ち続けた。
〈試合後・控え室〉
試合終了後、
九条は控え室に戻った。
氷川がすっと近づいて、iPhoneを手渡す。
「綾瀬さんからのメールです。」
無駄な言葉を省いた、氷川らしい一言だった。
九条はそのままスマホを手に取る。
画面に表示されたのは、澪からのメール。
「お疲れ様です。
お体いかがですか?
休みが取れそうなので、ウィンブルドンの決勝に合わせて四日間、そちらに行きたいと考えています。
準決勝の日に着いて、決勝の翌日に帰国します。
会いに行っても良いですか?
もし、迷惑でしたら無視してください」
その言葉に、
九条は少しだけ表情を変えた。
しかし、すぐに冷静さを取り戻す。
「……迷惑?」
彼は、小さく呟いた。
澪が来てくれる。
その事実が、
九条の心に、
静かに力を与えた。
メールを閉じ、
次の試合のことだけを考える。
それが、
九条のやり方だった。
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