〈6月18日〜29日・ウィンブルドン練習期間〉
ウィンブルドンの空は、
日ごとに少しずつ、色を変えていった。
芝は、毎朝、完璧に刈り揃えられ、
九条雅臣は、その緑の大地に、
黙々と自分を刻み続けた。
6月18日〜22日
基礎リズム作り。
芝の滑り感覚に身体を慣らす。
サーブとリターンの初期調整。
急がない。
急いで取り戻そうとすれば、必ず何かが崩れる。
九条は知っていた。
芝は、焦りを嗅ぎ取る。
6月23日〜26日
実戦形式ラリー開始。
ネットプレー、ドロップショット練習。
瞬間判断力を、芝仕様に最適化する。
身体が、少しずつ、
本来の動きを取り戻していく。
全仏で崩れたものが、
少しずつ、積み重なっていく。
6月27日〜29日
ミニマッチ形式練習。
センターコート・サブコートの感覚調整。
本番に向けた「無駄を削ぎ落とす」練習。
余計なものは要らない。
勝つために必要なものだけを、静かに研ぎ澄ます。
〈6月29日・夕方・最終調整〉
空は、淡い灰色に沈みかけていた。
九条雅臣は、
練習コートの端に立ち、
ラケットを軽く握り締めた。
今日は、最後の調整。
技術を磨くためではなく、
自分と、芝と、静かに向き合うための時間。
ショートラリー、リズム重視。
サーブのスピン量調整。
フットワーク確認。
コート全体を歩き、芝の感触を確かめる。
全員が、
九条の未来だけを見据えて、静かに支え続けた。
明日、
ここで戦いが始まる。
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