恋愛小説– tag –
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Miami
0106.遠い空の下で、同じ一日を生きている
砂漠の夜のあとで 眠い。 夜、早めに仮眠をとって、早朝にアラームで起きた。 BNPパリバオープンの決勝――雅臣さんの試合をどうしても観たかったから。 結果は分かっている。けれど、やっぱりリアルタイムで観たい。 その代償に、朝からまぶたは重い。 普段... -
Miami
0109.氷が割れる音
明日、静寂が証明する ミーティングルームのスクリーンに、対戦相手の映像が映し出される。 エイデン・リース。オーストラリア出身、右利き。 俊敏なフットワークと鋭いカウンター。 軽やかなステップで、どんな球にも食らいついてくる。 「リースはラリー... -
Miami
0107.「完璧」という孤独
湿度のリズム 朝、7時半。 東南からの陽光が、ゆっくりとスタジアムの縁をなぞる。 ハードロックスタジアムのコートは、北西から南東へと伸びていて、北側のコートだけが、すでに光を真正面から受けていた。 白いラインが眩しく浮かび上がり、湿度を含んだ... -
Miami
0108.声が届く距離
戦いの前の呼吸 朝の光が、カーテンの隙間から鈍く差し込んでいた。 外はすでに湿っている。空調の効いた部屋にいても、空気の底に重さが残っていた。 モニターの前に立った蓮見が、指先でタブレットを止めた。 「……出たな。二回戦、相手は――エイデン・リ... -
Miami
0110.記録されない声
氷の理性、揺らぐ影 会議室のスクリーンに、ロシア人選手の映像が映し出されていた。 アルチョム・レフチェンコ。 典型的なスラブ系の骨格を持つ男だ。 顎はしっかりと張り、フェイスラインは角ばっている。 頬骨がやや高く、額は広い。鼻筋が通っており、... -
Miami
0111.息をするためのテニス
影に慣れた者 午後の風は湿っていて、どこか重たかった。 九条は、淡々とサーブを繰り返していた。 乾いた打球音だけが、静かな空気を切り裂いていく。 観客も報道もいない。ただの練習。 それでも、その静けさの奥には、張り詰めた集中があった。 遠くか... -
Indian Wells
0105.【BNP Paribas Open | Final】氷の王と若きスター、砂漠で織りなした三幕劇
無表情を揺らせ――ジョシュア・ドイル、決勝の朝 決勝の朝。 ジョシュア・ドイルはホテルの鏡の前でラケットを握り直した。 昨日の映像が頭に焼き付いている。 砂漠の観客をすべて敵に回しても、九条は眉一つ動かさなかった。吠えず、喜びも見せず、ただ点... -
Indian Wells
0104.勝利の歓声を越えて
歓声の外にある場所 ロッカールームへ戻る通路は、行きよりも静かに感じた。身体は汗で重い。だが頭の中は、すでに次の決勝のことしかない。 椅子に腰を下ろすと、志水がタオルを差し出し、早瀬が足首の状態をもう一度チェックする。 「軸は問題ない」 短... -
Dubai
0098.澪の選択
決断 土曜の朝。 まだ街が動き出す前の時間に、澪は小さな鞄を肩に掛けて外に出た。 生理が終わりかけのタイミングを計って予約したこの日。平日は仕事があるし、痛みが長時間続くなら、休みの日の方が良い。 春には九条と温泉に行く予定がある。 動... -
Indian Wells
0099.澪の引越し
新生活 段ボールを積み上げた部屋は、もう生活の気配が薄れていた。 「ものが少なくても、まとめるとやっぱスッキリして見えるもんだな」 そう思いながら、私はiMacをそっと購入時の箱に入れていく。エルゴトロンのアームは分解して、ネジを小袋に入れて。...