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69.2月11日 午後練
こっちは地獄 「…続けるぞ」 九条の声に、時雨がうんざりした顔を向けた。 「続けるぞ、じゃねぇよ。こっちはもう3セット分くらい動いてんだけど」 九条は返事をしない。ただ、少し汗を拭ってラケットを構える。 彼のグリップは、すでに滑り止めテ... -
68.2月11日(火) 練習再開
朝食 朝のキッチンには、静かな包丁の音と、卵が焼ける軽やかな音が広がっていた。 レオンはエプロン姿で、黙々と作業を進めている。プロの動きに無駄はなく、それでいて、どこか家庭的な温かみもあった。 リビングには九条が既に座っており、新聞代わりに... -
67.2月10日 昼寝→ジム→夕食
「さっき、朝食を食べたら2回目していいって、約束したよな」 ベッドのふちに腰を下ろして、九条がぽつりと切り出す。 澪は少し身を引いて、警戒するように目を細めた。 「したけど……まさか4時間しか寝てないなんて思わなくて」 「したら、眠れる」 即... -
66.2月10日(月) 日本へ戻る
アフタヌーンティー予約 「いいからアフタヌーンティーのお店探して」 フォークをくるくる回しながら、澪はパスタを口に運ぶ。 そのスピードはわりと本気の空腹。 「予約が埋まるから当日は無理だ」 「それ、雅臣さんが行きたい“格式高いところ”だからでし... -
65.2月8日 ヘンリープール→ランチへ
仮縫いスケジュール 澪は自分の手元の紅茶を見つめながら、小さく呟いた。 「……クレーシーズン始まったら、本気で忙しくなるし、動けなくなるよね。三月も、インディアンウェルズとマイアミあるし……。私の趣味のために、ここまでさせてしまうのかって……」 ... -
64.2/8 夕方 ロンドン到着→サヴィル・ロウへ
ロンドン市内 ホテル到着 到着したのは、ロンドン市内、テムズ川沿いに建つ老舗ホテル「The Savoy」。 専用ゲートから車で乗り入れると、すでにロビー横にあるスタッフ専用デスクでチェックインの手配が済んでいた。氷川の手際が、もはや不気味なほどに無... -
63.2月8日(土) 澪の欲望
澪が“着せたい服” 「うん。でも残念ながら私は欠落したとこあります。あなたみたいに完璧ではありません。生きてはいけるけどね。生活はできる。でも全然完璧ではありません。欲望もあります。…で、雅臣さんは私に背中が開いた黒のドレス着せたいんでしょ... -
62.2月8日(土) 買い物→20の質問ゲーム
あと12日 目を開けた瞬間、まだカーテンの隙間からはやわらかい朝の光が滲んでいた。 ぼんやりと天井を見つめながら、澪は静かに呼吸を整える。 (……寝てた、ちゃんと) 昨夜のことを思い返すと、身体の奥にまだ微かに残る余韻がある。 すぐ横に彼がいな... -
61.2月7日(金)
澪 出勤後 朝の出勤ラッシュを抜けて、オフィスのドアをくぐる。 まだ誰も来ていないフロアは静かで、空調の音だけがやけに大きく響く。 タイムカードを打ち終えて席に向かおうとした時、背後から声をかけられた。 「え、綾瀬さん?Apple Watch…?」 振り... -
60.2月6日(木) 時雨との再会
やっぱり人間じゃなかった 午前9時。 日本の冬にしては湿度が低い朝。 低酸素トレーニングルーム。 ……の前で、時雨悠人は言葉を失っていた。 「……時速、30……?」 横のモニターには、たしかにそれと表示されている。 ベルトコンベアのように動くランニング...