Indian Wells– category –
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105.氷の王と若きスター、砂漠で織りなした三幕劇
無表情を揺らせ――ジョシュア・ドイル、決勝の朝 決勝の朝。 ジョシュア・ドイルはホテルの鏡の前でラケットを握り直した。 昨日の映像が頭に焼き付いている。 砂漠の観客をすべて敵に回しても、九条は眉一つ動かさなかった。吠えず、喜びも見せず、ただ点... -
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104.勝利の歓声を越えて
歓声の外にある場所 ロッカールームへ戻る通路は、行きよりも静かに感じた。身体は汗で重い。だが頭の中は、すでに次の決勝のことしかない。 椅子に腰を下ろすと、志水がタオルを差し出し、早瀬が足首の状態をもう一度チェックする。 「軸は問題ない」 短... -
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103.砂漠に響く声、砂漠に沈む声
ルーカス・エリクソン ロッカールームの空気は、いつもより重い。 天井の蛍光灯の光が白すぎて、心拍の速さまで照らし出している気がする。 「準決勝」――その響きが、胸の奥をざわつかせる。 ここから先は、ただのツアーじゃない。世界のトップに食い込む... -
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102.沼が凍る
準々決勝 開始 インディアンウェルズ、準々決勝。 日差しが傾き、スタジアムの空気は熱気とざわめきで満ちていた。 マティアス・ヴォルフ。 背の高い体を折りたたむようにしてベースラインの遥か後ろに立ち、ラケットを軽く揺らしている。 まるで最初から... -
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101.孤独の中の戦い
チームの思案 インディアンウェルズ、3回戦の試合を終えた翌日。 ホテルの一室に集められたチームは、長机に並べたデータと映像を前に、言葉少なに目を通していた。九条は別室で休んでいる。 「……ストレート勝ちはしている。数字だけ見れば文句はない」 ... -
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100.BNPパリバ・オープン開始
違反の重み BNPパリバ・オープン。 アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズの砂漠地帯に築かれた、巨大なテニスの祭典。 毎年3月、世界のトップ選手が一堂に会する。ドロー数はシングルス96、ダブルス32。男女共催のマスターズ1000大会であり、そ... -
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99.澪の引越し
新生活 段ボールを積み上げた部屋は、もう生活の気配が薄れていた。 「ものが少なくても、まとめるとやっぱスッキリして見えるもんだな」 そう思いながら、私はiMacをそっと購入時の箱に入れていく。エルゴトロンのアームは分解して、ネジを小袋に入れて。...
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