本編– category –
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17.【Australian Open 2025】Round of 16, 2nd Set “人間が声を張る理由 / Why Humans Raise Their Voices”
【第1ゲーム】人間の意思で動き始める セット間。 テイラー・リバースは、ベンチに深く腰を下ろした。 肩で呼吸を繰り返しながら、何度も自分の手を見つめていた。 その目に宿っていたのは、“戦意”ではなく—— **「もう一度、ちゃんとやる」**という、 人間... -
16.【Australian Open 2025】Round of 16, 1st Set “歓声の向こうに立つ者 / The One Beyond the Crowd”
開演 John Cain Arena – 19:01 ナイトセッションが始まった。 空はすでに沈み、人工の光がコートを照らしている。 だが、ここはロッド・レーバーでも、マーガレット・コートでもない。 ——これは、“The People’s Court”。 観客の誰もが声を持ち、意思を持ち... -
15.Routine – deviation
#チーム九条異常観察チャンネル(非公開) 氷川(マネージャー)がチャンネルを作成しました。 氷川念の為、九条さんには非公開のチャンネルを作りました。各自、普段とは違う行動を目撃したら報告してください。 蓮見監視チャンネルじゃん。こわ。 志水普... -
14.【Australian Open 2025】3rd round , 3rd set “制御完了” / Finalized Control
【第1ゲーム】再起動不要 / Reboot Unnecessary もう何も変える必要はなかった。 足元の角度も、握りの強さも、思考の順序すら。 再起動は、不要。 試合は続いている。 だが、演算はすでに終わっていた。 コートに立つ九条は、機械でも計算式でもなく、 “... -
13.【Australian Open 2025】3rd round , 2nd set “演算同期” / Sync Process Execution
【第1ゲーム】処理速度上昇 / Processing Boost 第2セット、開始。 九条雅臣は、左の手首を軽くひねるだけで、ラケットの角度を変えた。 ほんのわずかな回転。けれど、それがコート上では“方向性の切り替え”に等しい。 最初のサーブ。ワイドにえぐる左利き... -
12.【Australian Open 2025】3rd round , 1st set “解析開始” / Initialization Sequence
起動前確認 / Pre-Boot Check スマートフォンのウィジェットに、東京の時刻が固定で表示されている。 メルボルンとは2時間の時差。 現地時間、10:28。 日本時間、午前8時28分。 九条雅臣は、コート入り直前の控室で、スマートフォンを手にし... -
10.【Australian Open 2025】2nd round , 3rd set “予測不能性γ” / Uncertainty Variable γ
【第1ゲーム】“無音継続” / Silent Continuation #チーム九条 / オーストラリア2025 蓮見 11:19 AM ……マジで、休んでねぇな。 セット間の心拍数、ほぼ変動なし。 氷川 11:20 AM こっちから見ても“止まってた”感ないな。 ……まだ“処理中”の顔してる。 ※Slack... -
11.【Australian Open 2025】2nd round , 2nd set “削除パターンβ” / Erasure Pattern β
Intermission – Set 1 終了後 Margaret Court Arena / Day Match 観客席に、ようやく“ざわめき”が戻ってきた。 今、目の前で起きたものが「現実」だと、脳が追いつきはじめた反応だった。 相手選手は、ベンチに腰を下ろすと同時に、タオルで顔を覆う。 呼... -
10.【Australian Open 2025】2nd round , 1st set “処理対象B” / Target B
再起動は不要 #チーム九条 / オーストラリア2025 蓮見 10:32 AM ……ベンチでずっとラケット撫でてる。 呼ばれても目線すら上げない。 志水 10:33 AM 心拍数、スタンバイ中なのに下がってる。 普通じゃないよこれ……むしろ“入ってる”状態。 氷川 10:33 AM 表... -
9.After Victory, Silence
夕陽が沈みかけた頃、センターコートはようやく静けさを取り戻していた。 試合の熱気はすでに消え、観客も報道陣も去った後。 そこに残されていたのは、コート脇の一脚のベンチだけだった。 乾いた風が、青いベンチの表面を撫でていく。 さきほどまで、そ...
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