caretaker_of_the_complex– Author –
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Madrid
126.許可された異常
帰ってこない王者 控室に戻った瞬間、九条の周りにチームメンバーが駆け寄ってくる。 「大丈夫か!?」 「意識は!?」 「どこも怪我してないか?骨や筋肉に異常は」 九条の目はどこも見ていない。ただ立っているだけだ。表彰式も、トロフィー授与も全く喜... -
Monte Carlo
125.太陽は燃え、深海は目覚める Monte-Carlo Final: Sun vs Abyss
人を離れる朝 九条は、静かに目を開けた。 深い眠りから自然に浮上するように、ただ淡々と、次の行動へ移る。 歯を磨き、顔を洗い、シャワーを浴び、レオンが用意した朝食を静かに口に運ぶ。 特別な日、という空気は一切ない。 ――決勝? ――タイトル? ――プ... -
Monte Carlo
124.温度の衝突
不自然なまでに“正常”な朝 翌朝。 九条は、何事もなかったように起きてきた。 いや、むしろ“普通より健全”に見える。 食事は黙々と全量を摂り、睡眠は深く十分。 体温、バイタル、すべて正常。 それが逆に不安を煽った。 神崎が腕を組みながら言う。 「……... -
Monte Carlo
123.勝利のたびに、戻らなくなる男
戻る気のない朝 夜。 試合後に食事とシャワーを済ませ、志水と早瀬が交代で体をほぐし続け、神崎が深度のチェックを続け、レオンが栄養補給を管理した。 九条は眠っている間でさえ、筋肉の収縮が均一か、呼吸が乱れていないか、何度も確認されていた。 そ... -
Monte Carlo
122.赤土が試すもの
見えない乱れ リベラがベンチに腰を下ろすと同時に、 背後の指定エリアで、コーチのカルロスが一歩だけ前に出た。 声は出さない。 代わりに、指を二本、低く動かす。 ――テンポを落とすな。 ――前に出ろ。 リベラはタオルで顔を拭きながら、視線だけで応じる... -
Monte Carlo
121.削り合いの始まり
プロの朝は、何事もなかった顔で始まる 翌朝、九条は何事もなかったように目を覚ました。 枕元に残っていた重さや、昨夜の空白は一切見せない。 いつもの呼吸で上体を起こし、そのままバスルームへ向かう。 シャワーの音が短く響き、数分もしないうちに止... -
Monte Carlo
120.生き残るテニス
円が戻りかけた瞬間 サーブに入る前、九条は一度だけ目を閉じた。 深呼吸ではない。 意識的なリセットでもない。 ただ、身体から不要な力を抜くための、ごく短い“間”。 (……急ぐな。) 蓮見の言葉を思い出したのではない。 身体のほうが、勝手に拾った。 ... -
Monte Carlo
119.赤土の呼吸 — Breath of Clay —
赤土、王が歩く場所 モンテカルロの空は、異様に青かった。 陽射しは強いのに、空気は乾いている。 海沿いの街並みの先、モンテカルロ・カントリークラブの赤土が淡く光っていた。 九条は、無言のままクレーコートに立った。 踏みしめた瞬間、靴底が「ザリ... -
Kyoto
118.嵐山 星のや
春の回廊を抜けて 16:00前、「花桜テラス」へ向かう回廊には、春の光がやわらかく差し込んでいた。 川沿いの風が障子の隙間を抜け、桜の香りが微かに漂う。 澪は淡い色のワンピースに着替えていた。 少年の面影はもうどこにもない。 頬に陽が落ち、肩先の... -
Kyoto
117.サンシャインダブルの夜明け
現実の音 昼休みを終えて、澪は潤んだ目元を指先でそっと押さえ、鏡の前で呼吸を整えた。 仕事に戻る顔をつくる。 昼のオフィスには、現実が待っている。 エレベーターの中で、他部署の社員たちが笑いながら話していた。 「九条雅臣、優勝しましたね!」 ...