2026年3月– date –
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Madrid
129.感情を預けた怪物
感情なきノート 試合が終わったあと、九条は一切の余韻を持たなかった。 歓声も、拍手も、結果の数字も、彼の中には入ってこない。 あの空間はすでに終わっている。 まず、軽く身体を動かす。 呼吸を整え、心拍を通常域に戻す。 痛みも疲労も、評価対象に... -
Madrid
128.愛を抱く者、無を纏う者
触れてはいけない深層 翌朝。 九条は、決まった時間に目を閉じた。 朝の瞑想。 かつては、集中に入りやすくするための儀式だった。 試合前に心を整え、余計な雑音を切り捨てるためのもの。 今は違う。 入るためではなく、入っても戻れるようにするため。 ... -
Madrid
127.深海の呼吸法
戻るための合図 マドリードの夜は遅い。 夕食を終えても、まだ外は薄明るい。乾燥した風が窓を叩く。 スイートのリビングでは、異様な光景が広がっていた。 「……3、2、1。戻れ」 神崎の声と共に、早瀬が指を鳴らす。 乾いた音が響く。 ソファに座った九...
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