2025年4月– date –
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Monte Carlo
123.勝利のたびに、戻らなくなる男
戻る気のない朝 夜。 試合後に食事とシャワーを済ませ、志水と早瀬が交代で体をほぐし続け、神崎が深度のチェックを続け、レオンが栄養補給を管理した。 九条は眠っている間でさえ、筋肉の収縮が均一か、呼吸が乱れていないか、何度も確認されていた。 そ... -
Monte Carlo
122.赤土が試すもの
ベンチ:第2セットへ 第1セットを奪った直後のベンチ。 九条はタオルで汗を押さえながら、まるで何事もなかったかのように呼吸を整えていた。 深いラリーの余韻は体に残っているはずなのに、その痕跡がほとんど外から見えない。 対照的に、リベラはボト... -
Monte Carlo
121.削り合いの始まり
プロの朝は、何事もなかった顔で始まる 翌朝、九条は何事もなかったように目を覚ました。 枕元に残っていた重さや、昨夜の空白は一切見せない。 いつもの呼吸で上体を起こし、そのままバスルームへ向かう。 シャワーの音が短く響き、数分もしないうちに止... -
Monte Carlo
120.生き残るテニス”の始まり
円が戻りかけた瞬間 サーブに入る前、九条は一度だけ目を閉じた。 深呼吸ではない。 意識的なリセットでもない。 ただ、身体から不要な力を抜くための、ごく短い“間”。 (……急ぐな。) 蓮見の言葉を思い出したのではない。 身体のほうが、勝手に拾った。 ... -
Monte Carlo
119.赤土の呼吸 — Breath of Clay —
赤土、王が歩く場所 モンテカルロの空は、異様に青かった。 陽射しは強いのに、空気は乾いている。 海沿いの街並みの先、モンテカルロ・カントリークラブの赤土が淡く光っていた。 九条は、無言のままクレーコートに立った。 踏みしめた瞬間、靴底が「ザリ... -
Kyoto
118.嵐山 星のや
春の回廊を抜けて 16:00前、「花桜テラス」へ向かう回廊には、春の光がやわらかく差し込んでいた。 川沿いの風が障子の隙間を抜け、桜の香りが微かに漂う。 澪は淡い色のワンピースに着替えていた。 少年の面影はもうどこにもない。 頬に陽が落ち、肩先の... -
Kyoto
117.サンシャインダブルの夜明け
現実の音 昼休みを終えて、澪は潤んだ目元を指先でそっと押さえ、鏡の前で呼吸を整えた。 仕事に戻る顔をつくる。 昼のオフィスには、現実が待っている。 エレベーターの中で、他部署の社員たちが笑いながら話していた。 「九条雅臣、優勝しましたね!」 ...
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