2025年3月– date –
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102.沼が凍る
準々決勝 開始 インディアンウェルズ、準々決勝。 日差しが傾き、スタジアムの空気は熱気とざわめきで満ちていた。 マティアス・ヴォルフ。 背の高い体を折りたたむようにしてベースラインの遥か後ろに立ち、ラケットを軽く揺らしている。 まるで最初から... -
101.孤独の中の戦い
チームの思案 インディアンウェルズ、3回戦の試合を終えた翌日。 ホテルの一室に集められたチームは、長机に並べたデータと映像を前に、言葉少なに目を通していた。九条は別室で休んでいる。 「……ストレート勝ちはしている。数字だけ見れば文句はない」 ... -
100.BNPパリバ・オープン開始
違反の重み BNPパリバ・オープン。 アメリカ・カリフォルニア州インディアンウェルズの砂漠地帯に築かれた、巨大なテニスの祭典。 毎年3月、世界のトップ選手が一堂に会する。ドロー数はシングルス96、ダブルス32。男女共催のマスターズ1000大会であり、そ... -
99.澪の引越し
新生活 段ボールを積み上げた部屋は、もう生活の気配が薄れていた。 「ものが少なくても、まとめるとやっぱスッキリして見えるもんだな」 そう思いながら、私はiMacをそっと購入時の箱に入れていく。エルゴトロンのアームは分解して、ネジを小袋に入れて。... -
98.澪の選択
決断 土曜の朝。 まだ街が動き出す前の時間に、澪は小さな鞄を肩に掛けて外に出た。 生理が終わりかけのタイミングを計って予約したこの日。平日は仕事があるし、痛みが長時間続くなら、休みの日の方が良い。 春には九条と温泉に行く予定がある。 動...
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