2025年2月– date –
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87.アビエーション・クラブ・テニス・センター
練習開始 アビエーション・クラブ・テニス・センター。 観客席はまだ閉ざされ、スタッフが準備する物音だけが響いていた。 空気は乾いて澄み、気温は過ごしやすい。 ただ、差し込む日差しは容赦なく、ラケットを振ればすぐに汗が滲み、肌に残る前... -
86.Morning
出勤準備 翌朝。 目を覚ますと、カーテンの隙間から淡い光が差し込んでいた。 隣を見ると、九条はすでに起きているらしく、ベッドは空いている。 ぼんやりとした頭を振って起き上がる。 昨夜、バーで飲んだせいか、まだ少し体は重い。 ──でも... -
85.Night in Dubai
カフェ・ソシャエティー・ドバイ カフェの扉を開けた瞬間、ひんやりとした冷気が頬を撫でた。 外の乾いた熱気とは別世界のように、室内は大理石の床に金色の装飾が散りばめられ、シャンデリアが高い天井から光を落としている。 壁一面にはアート写真が飾ら... -
84.ドバイ到着
そろそろ到着 そろそろ着陸態勢に入る時刻だ。 ベッドに戻り、掛け布団の上から澪の肩を軽く揺らす。 「……澪、起きろ。もうすぐ着く」 ゆっくりと瞼を開けた澪は、まだ夢の余韻を引きずるようにぼんやりしている。 「ん……もう着くの……?」 「着く前にシャ... -
83.ロンドンからドバイへ
隠蔽工作 食事を終えて部屋に戻ると、澪は慌ててベッド周りやソファを点検し始めた。 クッションを叩き、シーツのしわを伸ばし、サイドテーブルの避妊具をバッグにしまいこむ。 「匂いとかある!?」 「アイツは犬じゃない」 「でもなんか部屋の空気とかで... -
82.シェフズ・グリル
シェフズ・テーブル 店の入り口でスタッフに案内を受け、重厚なアールデコ様式のホールへ足を踏み入れる。 深い木目の壁、真鍮の装飾、柔らかな照明――どこか舞台に上がる前のような緊張感が漂う。 案内されたのは、サヴォイ・グリルの奥にある「シェフズ・... -
81.Night in London
食後の片付け 食後の余韻を楽しんでいたけど、ふとテーブルに目をやると、食器がそのまま残っているのが気になった。 「……ちょっと片付けちゃうね」 そう言って立ち上がり、ワゴンの上に食器を一つずつ丁寧に戻していく。 カチャカチャと音がしない... -
80.Afternoon in London
いざ、アフタヌーンティー 元の服に着替えた九条が、澪に小さく声をかける。 「……終わったな。約束通り、行くぞ」 「うん!」 澪の顔がぱっと明るくなる。 「アフタヌーンティー!楽しみ!」 それを聞いていた蓮見が、さりげなく近づいてきた。 「ね... -
79.いざ、仮縫いへ
ロンドンの朝 うっすらと明るくなってきた天井を見上げて、澪はゆっくりと目を開けた。 深く眠っていたはずなのに、寒さと微かな明るさにふと目が覚めた。 窓の向こうは、まだ本格的に日は昇っていない。 時刻は、たぶん朝の七時前後。ロンドンの... -
78.The Savoy
車内 車は静かに動き出し、ロンドン中心部へと向かう。 暖房の効いた後部座席に身を預けながら、澪はふと前方を見た。 「氷川さん……機内、ちゃんと眠れました? お疲れじゃないですか?」 運転席の背中越しに声をかけると、ルームミラー越しに柔らかな目...