このページは、小説本編に登場する絵本『黒豹と白梟―その羽音を探して―』の全文掲載ページです。
澪が2月1日土曜の午後に読み返していた一冊。大人向けのちょっとだけ物悲しい物語です。
絵本 本文
まっくろな けものが
ひとりで あるいていた。
はやくて、つよくて、
なんでも てにいれられた。
あるひ しろい とりが とまった。
すぐ そばに。
けものは おもった。
「いつでも つかまえられる」
「でも―― つかまえない」
しろい とりは なにも いわなかった。
ただ そばに いた。
ひがしずみ、つきがのぼっても、
とりは そこに いた。
それが あたりまえに なったころ――
とりは いなくなった。
こえも はねの おとも なかった。
ふりむいた ときには もう、
そらには なにも いなかった。
かわりに かぜが ふいていた。
けものは いまでも さがしている。
その はねの おとを。
いつか また――
とまりに くると しんじて。







