♢澪視点♢
静かな休日の朝。
無理して起きなくていい朝。
ゆっくり目を開けた。
今、何時ぐらいだろ。
ゲストルームで一人で寝たし、何時まででも寝ても良いんだろうけど、九条さんは今どうしてるのか。
ドアの外からは何の音も聞こえてこない。レジデンスの中にいるのか、いないのか。
たぶん、いてもすごく静かだ。歩く時の足音すらほとんどしない。
試合中は人間と思えないようなスピードで動くのに、プライベートになるとすごく静かだ。ドアの開け閉めから日常の全ての動作が静粛な人。
ベッドから起き上がって充電しておいたスマホで時間チェック。10時。起きるか。
バスルームの洗面で顔を洗って、髪を整える。普段ケアを頑張ってるおかげか、寝癖はほとんどつかない。朝の用意が楽で助かる。
ノーメイクで着替えだけして、ゲストルームを出た。
九条さん、朝ごはん食べたかな。
どこか出掛けてるかな。
キッチンの方に行ったら、そこでタブレットを見ている九条さんがいた。
何か見てることがもう珍しい。
たぶん娯楽の動画とかじゃなくて、何か必要だから見てるんだろうな。
私に気付くと、視線を向けた。
「…おはよう」
私が先に言うと、一拍置いて、短い返事。
「おはよう」
静かな、けれど決して冷たい響きじゃない。
初日よりもだいぶ声の音が柔らかくなった。
九条さんが座ってる正面に座った。
タブレットの画面が見えない、でも相手の顔が真正面から見える位置。
「昨日言った相談のこと、今話してもいい?」
九条さんはタブレットの画面を消して、そっと置いた。
その動きに、一瞬で空気が変わった。
「いい。聞く。」
たった一言、でも完全に切り替わった瞳。
“聞くモード”に入った、まっすぐな目。
決して軽く流さない。
真正面から全部受け止めようとする。
「朝からする話じゃないかもしれない。でも早めに話しておきたくて。提案がある。私ね…」
そこまで言いかけて、続きがスムーズに言えなくなる。
こんな事を話していいのか。女としてどうなんだと自分に問い掛ける自分が内側にいる。
変な女だと思われるかもしれない。
でも、それならそれで良い。
何も話さないまま、曖昧なまま進みたくない。そういうハッキリ明言しないコミュニケーションは苦手だ。
意を決して話した。
「今まで、男性経験で楽しいとか幸せって思ったことが一度もない。
ただなんとなく、流されるままにしてたというか。こういうものって諦めてた。
でも、たぶんあなたは違うって感じた。だから、提案したい。
私が知らない世界を見たい。経験したことないものを知りたい。
っていうと大袈裟に聞こえるんだけど、端的に言うと中でいったことない。
でもたぶんこのまま生きててもそれを経験できるとは思えない。だから、あなたに協力してほしい。
俺に何のメリットが?って思ったら、断ってくれていい。…もし引き受けてくれても、無理強いしない。
最初の夜に言ったように、あなたの体調優先にして。したくない時はしなくていい」
そこまで言って、さすがにちょっと恥ずかしくなってきて、テーブルの木目に視線を落とした。
これは、恋人未満の人の甘い会話じゃない。
どちらかと言えば契約の商談に近い。
「返事はすぐじゃなくていい。こちらから急かしたりしない」
◆ 2月1日 朝(九条視点)◆
朝食を終え、タブレットを見ていた。
確認するのはスケジュール、移動の段取り、調整案件。
だが頭の隅では、ゲストルームの方で寝ている彼女の気配を感じていた。
(もうすぐ起きるか)
その気配は、予感に近いものだった。
彼女の生活のリズムは乱れがない。無駄がない。
どこかで、その姿勢に共鳴する部分があった。
足音。
顔を上げると、ゲストルームの方から彼女がやってきた。
「…おはよう」
少し早口。
緊張しているのか。
一拍おいて、短く返す。
「おはよう」
声が出た瞬間、自分の中でも少し意外だった。
昨日より、声の調子が柔らかかった。
彼女が正面に座った。
画面を閉じる。
(話すつもりだな)
「昨日言った相談のこと、今話してもいい?」
「いい。聞く。」
たった一言。
だが、全身の意識を切り替えた。
耳を澄まし、目を澄まし、目の前の相手の言葉を、感情を、逃さない。
彼女は言葉を選びながら、話し始めた。
(……)
内容は意外だった。
だが、九条は一度も途中で割り込まなかった。
澪が視線を落としたときも、じっと彼女の顔を見ていた。
(知らない世界を知りたい、か)
九条にとって、「知らない世界」はテニス以外のほとんどのことだ。
だが、彼はそれを求めたことはない。
必要なのは勝つこと。結果を出すこと。
それが全てだった。
だが目の前のこの女は、
自分が求めないものを、ためらいなく求めた。
(……面白い女だな)
そんなふうに思った自分に、心の奥で小さく笑った。
「返事はすぐじゃなくていい。こちらから急かしたりしない」
彼女はそう言った。
九条は少しだけ背中を預け、呼吸を深くした。
一瞬の沈黙の後、彼は口を開いた。
「――返事は、要らない。」
低く、短く。
「行くなら、もう決めている。」
そう言った九条の瞳は、まるで試合前のように澄んでいた。
彼は、迷わない。
求められたなら、応える。
それだけだ。
(……女としてどうか、なんて気にするな。
これはお前が選んだことだ。俺も選んだ。)
静かな、でも確かに熱を孕んだ空気が、テーブルを挟んで漂った。
♢澪視点♢
…それ、引き受けてくれるってこと?
いきなりの提案なのに、決断が早い。
引き受けても、結果がどうなるかなんてわからないのに。
いけるかどうかなんて、私自身にも、誰にも分からないのに。
この人は「やりたいから」っていう理由では絶対に引き受けない。
むしろ、どうなるかわからなくても、引き受けたからには結果を生む。そういう決意を持って引き受ける人だ。
そして、返事は急がないって言ったけど、したくない事なら即断る人だ。それは感じ取れる。
自分の契約やスポンサー関連でも、やりたくないことなら間髪入れずに断ってる。
引き受けるということは、期待以上の成果を出すという信念を持って行動する。そういう人だ。
語らずとも人から流れる空気、心の中に広がる世界でわかる。
私はスピリチュアル系は興味ないけど、その人が持つ心、思考の深い浅いくらいは読み取れる。
今の時代は、思考の浅いものが流行ってる。
TikTok、ショート動画、3分ドラマ。
すぐ結果がわかる。待たなくていい。
その代わり、苦しみの末に訪れる大きな感動も無い。心が震える体験も無い。
長いトンネルを抜けた末に広がる美しい景色、は今の時代には求められていない。
私はそういうものが好きだから、浮いてる。
そんな日常の中で見つけた。
海岸を歩いていたら、龍涎香を拾ったようなものだ。
その価値がわかる人なら、大事に拾って持って帰って、誰にも話さない。渡さない。
でも束縛なんてしたくない。
相手のペースを乱すことはしない。
私もそれは好きじゃない。
お互いの意志のもと、近くにいたいときにいる。
せっかく見つけたアンバーグリス。
大事に熟成させたい。
「じゃあ、先に朝ごはん食べさせて。お腹空いてる時にしたくない。今日は出掛ける用事ある?ずっとここにいる?」
◆九条視点◆
「じゃあ、先に朝ごはん食べさせて。お腹空いてる時にしたくない。今日は出掛ける用事ある?ずっとここにいる?」
彼女の問いに、九条は一瞬だけ思案し、短く答える。
「……午後に、少し人を入れる。食事の準備を頼んである。」
「ふーん、わかった。じゃあ、それまで私、何してたらいい?」
「任せる。」
「そっか。」
彼女は自然に笑った。
決して緊張感を煽らず、ただ生活の一場面として会話が続いていく。
九条は立ち上がり、冷蔵庫を開け、用意してあった軽食を取り出す。
澪の好みを意識した食材選び――氷川が準備したものだ。
「パンとサラダ、いるか。」
「いる!」
彼女が小さく手を挙げる。
その仕草に、九条は胸の奥でわずかに笑った気がした。
(……本当に面白い女だな。)
こんな風に、人と自然に朝を過ごすなんて、いつ以来だろう。
記憶にない。
むしろ、記憶に残るほどの経験が、今まで無かった。
静かで、でもじわじわ熱を帯びていく――そんな時間が、静かに積み重なっていった。
♢澪視点♢
午後から来客か。
仕事の人かな。
その間は外に外出しよ。
自分で朝ごはん用意しようと思ってたら、彼の方から「いるか?」って提案があった。
しかも材料からサラダ作ってくれた。意外。
料理するイメージなかった。
昨日、夜家に帰ってから、冷蔵庫の中に食材がたくさん入ってるし、バスアメニティー類だけじゃなくて、家の中がずいぶん家っぽくなってた。ちゃんと人が生活できるように色々な物が補充されてる。
ちゃんと洗濯洗剤もあった(笑)
あの人、ちゃんと用意してくれたみたい。
ただ………見たことないメーカーの洗濯機だった。
「ねえ九条さん。聞いてもいい?あの洗濯機って、使ったことある?」
彼は少し首を傾けた。
「……ない。」
「やっぱり!見たことないメーカーだったし、なんか操作パネルに日本語と英語の両方書いてあって、初めて見るデザインだった。」
たぶん海外メーカーなんだろう。良いやつだろうけど、使い方がわかんない。
「普通の洗濯機だったら私でも使えるけど、あれは説明書探さないと絶対わかんない。あとで一緒に見てもいい?」
九条さんは小さく息を吐き、肩を落とした。
「……あれは氷川が選んだ。」
氷川?
「あの、いつもお世話してくれてるスタッフの人?氷川さんって言うんだ」
お礼言っとこ。
………そうだ。
「ねえ、午後から人が来るんだったら、午前中ルームツアーやりたい。この家、広過ぎてどこに何があるのか全然わかんない。見てほしくないとこは見ないから、できる範囲でルームツアーしたい」
やたら高そうな家具や家電があるけど、彼が触ってるの見たことない。
そもそも家電の使い方知ってるのか疑問。
◆九条視点◆
澪の提案に、九条は少しだけ目を細めた。
「ルームツアー、か。」
(……そんな発想が出るとは思わなかった。)
確かに、言われてみればこの家は広い。
滞在中に澪がどこに何があるか把握できるようにするのは、合理的と言えば合理的だ。
ただ、自分自身がこの部屋の配置をすべて理解しているかと問われれば――怪しい。
「見せられない場所はない。勝手に触らなければ、自由に見ていい。」
「わかった。じゃあ、案内して!」
澪は立ち上がり、少し弾んだ声を出した。
(……無邪気だな。)
そう思った瞬間、ふっと胸が温かくなる感覚が走った。
♢澪視点♢
ルームツアー、めっちゃ面白い。
リビング、寝室、書斎、ゲストルーム……知ってると思ってたけど、実際は知らない部屋がいっぱい。
「ここ何に使ってるの?」と聞いても、九条さんは「使ってない」とか「分からない」とか、簡単な返事ばっかり。
いや、普通わからないで済ませる!?
この人、家の持ち主なんだよね!?
高そうな海外製のコーヒーマシン、冷蔵庫、ワインセラー――でもワイン飲まないから手をつけてない。
トレーニング器具もいくつか置いてあるけど、使い込んだ形跡がない。
むしろ、道具に頼らず体を作り上げてるタイプか。
「ねえ、私の方が家の中詳しくなりそうだよ?」
冗談っぽく笑ったら、彼は肩をすくめて短く返した。
「そうかもしれない。」
(……ほんとだよ。)
⸻
澪はふと、ゲストルームから少し離れた部屋のドアに目を止めた。
「ここは?」
「……そこは入らない方がいい。」
九条の声が、少し低くなる。
「わ、わかった。見ない。」
澪は手を引っ込め、無理に探ろうとしなかった。
(そういうところがあるんだ。
ちゃんと線を引くところ。
その線を越えないようにするのが、私のルール。)
◆九条視点◆
(……この家は俺のシェルターだ。)
競技者として、ただ勝つために用意した拠点。
余計なものを置かない。
他人を入れない。
そう決めていた。
だが――。
(……今は、そうでもないか。)
後ろを歩く澪の足音を聞きながら、ほんの少し、自分の頬が緩んだ気がした。
◆ 2月1日(土)昼前(九条視点)◆
澪が支度を始めたのは、昼少し前だった。
ゲストルームのドアが閉まる音、鏡台の前で立てるわずかな物音。
ああ、化粧をしているのだな、と音で分かる。
九条はキッチンの端、タブレットを手にしたまま、
その気配を感じながら静かに息を吐いた。
彼女は言っていた。
「数時間、外に出る」と。
そして「終わったら連絡して」とも。
用件は問わなかった。
彼女が彼女の時間を過ごす、それでいい。
間もなく、ゲストルームのドアがそっと開き、彼女が出てきた。
「準備できたよ。連絡があるまで外にいるから、終わったら連絡してね」
そう言いながら、バッグの紐を直す仕草。
その指先の丁寧さと、ほんの少し緊張を帯びた声色――
九条は自然と、わずかに頷いた。
「分かった。」
それだけ。
言葉は要らない。お互い、分かっている。
彼女は靴を履きながらこちらを振り返った。
「行ってきます。」
九条は視線を上げ、少し間を置いてから、口を開く。
「……行ってらっしゃい。」
その声は、いつもと同じ調子――のはずだったのに、
自分でも気づかぬほど微かに、柔らかさを含んでいた。
⸻
玄関のドアが閉まる音。
部屋に戻った静寂。
九条はタブレットを閉じ、手元のスマホを手に取った。
(澪が外に出た。レオンを入れるタイミングは――今だな。)
氷川に短く連絡を入れる。
「澪が出た。予定、早めてもいい。」
画面に浮かぶ既読マーク、そして即座に戻る返信。
『了解。調整済み。これから向かわせます。』
九条は深く椅子にもたれ、天井を一度仰いだ。
午後の予定は、調理の打ち合わせと準備。
だが、心の奥に小さな違和感が残っている。
(……家に、彼女がいない。)
ほんの数時間、わずかな外出。
だというのに、部屋の空気が一気に冷えたような感覚。
九条は、再び目を閉じた。
(――ああ、面倒だな。)
自分は本来、こういう感覚を必要としない人間だ。
勝利のことだけ考えればいい。
余計な情など、何の価値もない。
なのに。
なぜか今日、彼女が外に出たことで、
不意に気配の消えた空間が、ひどく静かに感じられた。
(……戻ってきたとき、彼女は何を手にして帰るだろうか。)
考えても無駄だ。
だが、それを考えている自分がいる。
九条は椅子を引き、背筋を伸ばした。
間もなく、玄関のチャイムが鳴るだろう。
午後の準備に入る時間だ。
◆ 栄養士レオンの調理(九条目線)◆
午後1時。
室内の静けさの中、エレベーターの扉が音もなく開いた。
九条はタブレットを閉じ、顔を上げる。
そこに立っていたのは、エプロン姿のレオン。
「こんにちは、少し早めに入らせてもらいました。」
落ち着いた声、プロの立ち居振る舞い。
九条はただ短く「いい」と返し、視線を戻した。
彼にとって、信頼できるスタッフとは「余計なことを話さない相手」だ。
互いに確認するのは必要なことだけ。
「材料、搬入済みですね。キッチン、借ります。」
手短な挨拶。彼はプロだ。無駄がない。
レオンがキッチンに入ると、驚くほど迅速に道具の配置、材料の確認、下準備を始める。
九条はソファに戻り、タブレットを片手に作業の進行音を聞いていた。
(……今日のメニューは何だ?)
問いは口にしなかった。
だが、レオンは作業の手を止めずに答えた。
「夕食用に、サーモンと野菜のグリル。夜遅くなることも考えて、消化に良いメニューです。
あと、明日の朝用にオートミールとフルーツの準備、冷蔵用の常備サラダ。
彼女の分も考慮して量は調整済み。」
(彼女の分も――)
九条の指がほんのわずか止まった。
レオンが、澪の存在を口に出したこと。
それはつまり、すでに把握済みだということ。
だが、気づいていないフリをしてくれている。
九条は短く「任せる」とだけ言い、再びタブレットの画面に視線を戻した。
(……気にしているのか、俺は。)
小さな笑みが心の奥に湧き上がる。
静かだが、確かに波立つ何か。
♢2月1日午後 澪目線♢
レジデンスを出てから、とりあえず本屋に向かった。
探してる本があるわけじゃない。でも紙の本の背表紙を見て、気になるタイトルを探すだけでも楽しい。
電子書籍も読むし、荷物にならなくて便利だけど、紙には紙の良さがある。
本棚に並んでいる背表紙を見て、気になったタイトルの本を手に取って、目次を見る。そこから読みたい章を探す。
その作業で、今の自分が何を求めているかが分かる。今の自分にはどんな文章が刺さるのかが分かる。
そうやって、あの暗闇の期間を抜けた。完全には名残は消えないけど、私は本から”生き方”と“自分の救い方”を教わった。
自分以外の人間に救われたことはない。自分を救えるのは自分だけ。自分の中に新しい考え方、知識を取り入れること、休むことが私が生きられる道だった。
活字を読むことが好きなんじゃない。知らなかったことを知るのが好き。自分が知らないことを常に探し続けている。
絵本コーナーに差し掛かった時、記憶の片隅に引っ掛かっていた何かが反応した。
それは、絵本にしてはちょっとダークな色合いで、絵があんまり可愛くないやつ。黒豹と白い梟が出てくるお話。
子供の頃にどこかで読んだ記憶があって、内容はすごく頭に残ってたのに、タイトルが分からなくて、いつしか忘れてしまっていた。
見た瞬間に、それを思い出した。どこで読んだのかは忘れてしまった。
ただ、内容が当時の私はあまり理解できなかったのに、心に残ったことは覚えてる。
思わず購入してしまった。
それを持って、近くのカフェに向かった。絵本じゃ時間をあまり潰せないけど、カフェなら充電ができるから、そこで読みかけの電子書籍でも読むことにする。
土曜日の午後のカフェは混んでた。
でも一人だったから、席は確保しやすかった。
脱いだコートとさっき購入した絵本の袋を席に置いて、注文カウンターに向かう。
ホットでちょっとサイズ大きめのコーヒーを注文した。
九条さんの用事がいつ終わるか分からなかったから、一応長期戦を覚悟して。
一度家に帰っても良かったんだけど、なんとなく面倒だった。長時間かかるならそう言うだろうし。
出来上がったコーヒーを持って席に戻る。
購入した絵本を袋から出した。
なんとなく内容は覚えてる。でももう一度読みたくて買った。
いつも一人でいる黒豹。
そこにやってくる白梟。
何をするわけでもないけど、なんとなく一緒にいる。
そんな2匹。

何を言いたいのかよく分からない、この先どうなったかもよく分からない絵本なんだけど、なんか好きで何度か読んでいたのを覚えてる。
大人になったら分かるかな?と思って買ってみたけど、やっぱり分からなかった。
そばにいる存在でも、いついなくなっちゃうか分からないから大事にしろ、ってことなのかな。
そもそも子供向けに作られていないから、子供に対して高説を垂れるような表現がなくて好きだったのかもしれない。
我ながら捻くれた子供だったな、と思う。
◆ 15:30頃・九条視点
キッチンから片付けが終わった音が聞こえてきた。
足音、布を絞る音、ドアの開くわずかな音。
レオンがリビングに顔を出す。
「じゃあ帰りますね。二日分置いてあるので、また月曜日に次の分を作りに来ます。」
九条は立ち上がらず、ソファから短く返した。
「……分かった。」
それ以上は要らない。
必要なことは言葉にせずとも伝わっている。
玄関のドアが閉まり、完全な静寂が戻る。
九条はふっと息を吐き、ソファに背を預けた。
(……終わったな。)
天井を一度だけ仰ぎ、スマホを手に取る。
画面を開き、既読がつかない澪のトーク画面を見下ろした。
(こちらから、だ。)
「終わった。戻ってきていい。」
打ち込んだメッセージは、余計な飾りも絵文字もない。
送信ボタンを押し、指を離す。
(……さて。)
彼はスマホを置き、立ち上がった。
コーヒーでも淹れるか、先にシャワーを浴びるか。
だが――次の瞬間、今にもドアが開く音がしそうな気配がして、
九条はほんの少し、肩の力を抜いて待つような姿勢になった。
🍽 2月1日(土)夕食メニュー(レオン作成)
✅ サーモンのグリル 〜ハーブレモンソース添え〜
✅ グリル野菜の盛り合わせ(ズッキーニ、パプリカ、アスパラガス)
✅ クルミとチーズのサラダ
✅ バゲット(カット済み、温めるだけ)
✅ ミネストローネスープ
☀ 2月2日(日)朝食セット
✅ オートミール(ナッツ・ドライフルーツ入り、蜂蜜・ミルク別添え)
✅ カットフルーツ盛り(キウイ、オレンジ、ブルーベリー)
✅ ヨーグルト(ハニー&ナッツソース付き)
✅ ハーブティー or ブラックコーヒー
🥗 常備用ストック(冷蔵保存)
✅ チキンと豆のマリネサラダ
✅ 野菜スティック(ディップ用ソース付き)
✅ 小分けフルーツ(澪用のおやつにも)
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